新聞一面の下段には、書籍広告が並んでいます。
業界では、このスペースを「サンヤツ」や「サンムツ」と呼んでいます。
この枠に書籍広告以外が入っているのを目にすることがないので、ここは出版社専用の枠なの?と思われるかもしれません。
この慣例は戦後からずっと続いており、書籍専用としている新聞社もあります。
ただし、例外を認める新聞社もあります。
新聞一面の下段には、縦に三段、横を8分の1や6分の1サイズに割った広告枠があります。
ここには、基本的に産経新聞以外は(産経新聞は一面に広告枠がありません)、一面下段には出版物しか掲載できません。
一面下段の広告が書籍専用なのには理由があります。
新聞の一面は雑誌でいうところの表紙で、新聞社にとって一番価値のある面です。
あまり広告めいた広告が並ぶと、新聞の品位や信頼性が下がることも危惧されます。
そこで、情報的な価値があり、そこまで広告めいていないという点から書籍広告が並んでいます。
この慣例は戦後間もない昭和24年に、朝日新聞が始めたものです。
一般家庭にテレビが普及したのは昭和33年頃。
庶民にとって新聞くらいしかメディアのなかった時代は、書籍の刊行情報を知るには一面の書籍広告や書評コーナーが大いに役立っていました。
読者にとっても一面の書籍広告は有益な情報として映っていたのですね。
新聞を好む読者は、知的好奇心や向上心が強いですから、現代もそれは変わりません。
特別枠として、新聞広告の料金はやや高めとなりますが、それだけ価値の高い広告スペースと言えます。
例えば朝日新聞は、サンヤツは天声人語の真下にきますし、編集記事と同じ活字を使用することが認められているので、の高い広告を掲載することができます。
しかし、書籍以外は絶対に掲載できないというわけではありません。
条件を満たせば書籍そのものではない広告も掲載可能です。
例えば読売新聞は、「CDやDVDなどの音楽・映像メディアは書籍に付随するもののみ掲載できる」
、朝日新聞は「書籍コードをもっており、書店で流通している商品なら掲載可能」としています。
かなり限定的ですが、以前よりこのあたりのルールはゆるくなっていますね。
ただし、一面下段については、そもそも規定が非常に細かいので注意が必要です。
例えば朝日新聞は、サンヤツ広告について以下のようにルールを示しています。
・編集記事と同じ活字を使用し、統一感と高い拡張を維持
・出版物との関係の有無にかかわらず、催事、懸賞、プレゼントなどの告知は掲載できない
・外国好みの内容は掲載できない
・明朝体は5倍まで。
書籍タイトルが一文字の場合は5.5倍まで可。
・ゴシック体は3倍まで
・ハートマーク、八分音符マークは原稿内に各一箇所のみ使用可能。
・出版物名、著者名、出版社名、説明文、コピーなどを矩形以外のもので囲むことはできない
・イラストやロゴは使用できない
……など。
これらは一例で、まだまだ細かい規定がたくさんあります。
これは新聞社ごとに少しづつ異なるので、入稿規定は必ずチェックしてから原稿作成してくださいね!