美容や健康に対する意識が高い現代社会の中で、消費者に対する食品のアピールポイントも大きく変化してきました。特にダイエットという観点から、痩せる効果を狙った商品や広告も、非常に多くなっています。
では、広告の中で痩せる効果について、どこまで表現できるのでしょうか。
例えば、普段食べている食事を低カロリーの食事に置き換えることで、総摂取カロリーは減少しますね。その結果、ダイエットにつながり痩せるという場合には、事実であれば広告で表現できる可能性は高くなります。
しかし「太りにくい体質にする」「体内脂肪を分解する」「頑固な宿便を排出する」などの表現は、医薬品的な効能効果とされますので、通常の食品では医薬品医療機器法により、アピールすることができません。
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器等は「本当に有効なのか」「安全なのか」といった点が最も重要であり、広告が与える影響も大きいため、医薬品医療機器法では以下のように定めています。
「何人も、医薬品、医療部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない(第66条)」
また、仮に「健康食品」に医薬品のような効能がある場合には、
「何人も医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であって承認又は認証を受けていないものについて広告をしてはならない(第68条)〜略〜」
とされており、もし本当に「健康食品」に医薬品のような効能があるのが事実ならば、未承認の医薬品に該当するため、同法に抵触するおそれがあります。
また、「理想の体型に」「おかげで何kg痩せた」といった表現は、健康保持増進効果について「著しく人に誤認させる表示」に該当するおそれがあります。食事制限と適切な運動をしないで「飲む・食べるだけで痩せる」などの表現は注意が必要です。
商品に関する広告について、健康増進法では
「何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。〜略〜(第31条)」
としています。
とはいえ、「特定保健用食品(トクホ)」「機能性表示食品」などの広告では、
「○○の働きにより脂肪の吸収を抑えるのを助けるので、体脂肪が高めの方に役立ちます」
「本品には○○が含まれますので、体脂肪が気になる方に適しています」
といった、特定の保健目的が期待できる表示の広告が存在しています。
これらは消費者庁に許可または届出された表示に限られているのですが、「痩せる」といった表示を許可されたトクホやその広告はありません。
ここまで読んでいただいた方は何となくわかると思いますが、機能性の表示ができる「保健機能食品」でも、食品である限り「飲む・食べるだけで痩せる」表現はできません。
トクホなどでも「コレステロールの吸収を抑える」などの表示ができる程度で「痩せる」といった断言はできませんし、もし本当に「飲む・食べるだけで痩せる」製品があるとするなら、それは食品ではなく医薬品や医薬部外品の扱いとなります。
【参考文献】公益財団法人 広告審査協会 アド・レビュー