新聞を扱う広告会社では、一般紙や全国紙、ブロック紙といった呼称は一般的ですが、その分類は中々分かりづらいものです。まずその前に、新聞を記事内容で大まかに分けると、「一般紙」と「専門紙」や「スポーツ紙」などに分かれます。
多くの方が思い浮かべる「新聞」というと、新聞の部類としては「一般紙」にあたり、一般的な記事を読んでもらう新聞となります。朝日新聞や読売新聞、日本経済新聞などがこれに当たります。
「専門紙」は業界紙とも呼ばれ、特定の工業や商業など専門の内容が多く書かれた新聞です。例として日刊工業新聞や日経MJ、東商新聞などが挙げられます。
「スポーツ紙」に関しては、一般的にスポーツ中心の記事構成となります。スポーツ報知のように元々は報知新聞という一般紙だったものがスポーツ紙に転換したケースもあります。とはいえ、スポーツの記事だけでは紙面が作れないこともあり、政治の記事や一般的なニュースを取り上げることも多く、その線引きは曖昧になっています。上記のスポーツ報知の他に、日刊スポーツやスポーツニッポンなどがあります。
他にも「英字紙」や「子ども新聞」「大衆紙」「タブロイド紙」などもありますが、これらは別の機会に触れるとして、このページでは一旦「一般紙」と「専門紙」「スポーツ紙」で分類します。
「一般紙」は配布エリアにより「全国紙」「ブロック紙」「地方紙(県紙とも言います)」に分かれています。
「全国紙」は全国で発行している新聞で、地域によって、県版ページなど多少の差し替えはあるものの、ほぼ同じ内容の新聞が配布されます。具体的には朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞(日経)、産経新聞の5紙を指し、配布エリアによって「全国版」や「東京本社版」「県版」などの版に分かれています。
「ブロック紙」は配布される範囲の広い地方紙という位置付けで、北海道新聞・中日新聞・西日本新聞の3紙を指します。「ブロック紙」という言葉自体は死語になりつつありますが、元々は県と県(または広いエリアとエリア)の塊=ブロックというのが由来です。
「地方紙」は「県紙」とも呼ばれ、各県内で発行される代表的な新聞で、例として青森県でしたら東奥日報、岩手県でしたら岩手日報となります。ほとんどの県に地元に密着した地方紙が存在しますが、地方紙の無い県や、地方紙が2紙存在する県もあります。
北海道新聞・中日新聞・西日本新聞の3紙はブロック紙として広い地域に配布され、県・エリアごとにページの切り替えをしている事が特徴です(例:北海道新聞なら札幌本社版や函館版など)。しかし、地方紙でも静岡新聞など、県内のエリアを複数に分けてページの差し替えを行なっている新聞はあります。それではなぜ、静岡新聞をブロック紙とは呼ばずに、この3紙だけをブロック紙と呼ぶのでしょうか?
実はブロック紙は以下の理由により地方紙とは分けて扱われています。
・北海道新聞は北海道の全道(全道版)または細分化されたエリアの版で配布されます。北海道の「道」は「県」よりも大きい単位ということもあり、地方紙(県紙)としては分類しづらいのが大きな理由です。また新聞社の組織の観点からも、旭川支社や釧路市社、札幌支社などが独立しており、ただ版を切り替えているだけではないためにブロック紙の扱いとなります。
・中日新聞は愛知県の新聞社ですが、岐阜県、三重県、静岡県の西部でも版を分けて発行されているのが大きな理由です。また東京新聞という関連会社も持っているため、地方紙(県紙)扱いとはなりません。
・西日本新聞は福岡県の新聞社ですが、福岡県は佐賀県や長崎県まで商圏が広がっています。商業・工業のポテンシャルが高い地域は、自ずと商圏が圏外にも及ぶため、福岡県以外の版を持つ西日本新聞も、地方紙(県紙)に分類できずブロック紙扱いとなります。
かつては宮城県の河北新報や広島県の中国新聞もブロック紙と呼ばれていた事がありました。例えば河北新報はかつて宮城県内にとどまらず、山形県・宮城県・岩手県などでも発行されていました。昔は発行部数イコール新聞社の力と言われていた時代もあり、どこの新聞社も他県にまたがり発行部数を増やしていましたが、今では発行部数競争に拘らなくなったこともあり、河北新報や中国新聞は地方紙(県紙)の扱いとなっています。
逆に静岡新聞は県内のエリアを複数に分けてページの差し替えを行なっておりますが、発行エリアが県内で収まっているため、ブロック紙ではなく地方紙(県紙)の扱いとなります。
朝日新聞や読売新聞を基準にして東京から地方紙(県紙)を見ると、発行部数や東京での知名度から、地方紙を軽く見る方がいます。「その県で本当に読まれているのか」「結局、全国紙を読んでいるのでは」と疑う人もいるでしょう。しかしそれらは、県によっては当てはまりません。
元々、戦前に国の指導のもと「地方紙」というものを作った経緯もあって「地方紙」という言葉を使っていますが、東京から見れば「地方」でも、地元では新聞以外にラジオやテレビ、それ以外のメディアを持っている新聞社のケースもあり、地元に根付いた一定の購読層を持っています。
基本、各県に地方紙(県紙)があるのですが、滋賀県に代表されるように一部、地方紙(県紙)が無い県があります。例えば滋賀県では主に読売新聞・朝日新聞の滋賀県版が読まれ、その次に京都新聞が読まれています。
これは大都市に近い県に多い現象で、大都市の周りにある県では、人の流れが大都市を向いているため、県内の情報だけでは新聞紙面が作りにくいのが理由です。
また、大都市近郊の県では地方紙(県紙)があっても実際の発行部数では全国紙の県版が多く読まれている県もあります。とはいえ、そういった地方紙(県紙)でも、学校の教師が赴任する年度始めや、入試合格者発表など、読者が県内のニュースを読みたくなる時期は発行部数が伸びる傾向にあります。
ここまで「全国紙」「ブロック紙」「地方紙(県紙)」について述べましたが、実は地方紙(県紙)よりも小さい発行エリアの新聞もあります。第二地方紙またはエリア紙と呼ぶ場合もありますが、例として青森県だと地方紙(県紙)は東奥日報ですが、それとは別にデーリー東北や陸奥新報があります。
東京から見ると東奥日報が主な新聞で、デーリー東北や陸奥新報が第二地方紙というイメージがあるかもしれませんが、実は青森県の中では東奥日報が青森市、デーリー東北は八戸・県東部、陸奥新報は弘前・県西部といったように地域によって読まれている新聞は異なります。
東北の太平洋側はそういうエリアが多く、河北新報が一番有名な新聞と言われる宮城県であっても、それ以外に石巻日日新聞などの新聞社があります。また北海道も釧路新聞、十勝毎日新聞、苫小牧民報、室蘭民報、函館新聞などが発行されています。これらの新聞社は東京から見た目線と異なり、各メディアだけでなく現地のホテルや産業まで関わっている場合もあり、地元に強く密着しています。
東京などの都市部から見れば、地方の新聞社を部数や配布地域の広さ、中心になっている都市の大きさやポテンシャルで見てしまいがちです。しかし地方から見ると状況は全く異なり、その新聞社が新聞以外のメディアや産業などに広く関わる事で、東京などの中央から「どれだけ独立して経済圏を持っているか」ということにより地元から支持される新聞社もあります。
他県の地方紙に広告を載せる場合には、視点が異なる場合があることに注意しましょう。